Bellatrix of Orion オリオン座ベラトリックス

▼ 神話について＜クリックで展開＞

アマゾンたちはギリシア神話における記述によれば、ギリシアの地から遠く離れたトラキア地方よりもさらに東方の現在のトルコが位置する小アジアの黒海周辺の地域などに居住していたとされていて、左の乳房は子供に乳を与えるために残しておいたものの、右の乳房は弓矢を射る際に邪魔になるため削ぎ取っていたと語り伝えられているほどに、戦いにその身を捧げた女たちであったと考えられることになります。

 

そんなアマゾンたちの女王であったヒッポリュテは、彼女が率いるすべての女戦士たちの統領である証として、アレスから授かったとされている美しい腰帯を身につけていたとされています。

●アレスは、ギリシア神話に登場する神で、戦を司る。ゼウスとヘラの息子。オリュンポス十二神の一柱。ローマ神話のマルスと同一視され、火星とも結びつけられた。

 

ミケーネ国王エウリュステウスの娘であったアドメーテーがこうしたアマゾンの女王が持つとされている美しい腰帯を欲しがったため、この腰帯を異国の女王であるヒッポリュテから奪い取って持ち帰るために、ヘラクレスが遣わされることになり、これが9番目の功罪と考えられることになるのです。

 

 

長い船旅の末に、そうした黒海の近くのアマゾンたちが暮らす奥地まで分け入って行ったヘラクレスの一行は、この地でアマゾンの女王であったヒッポリュテと出会うことになります。

そして、ゼウスの血を引く英雄ヘラクレスの勇ましい姿を目にして感銘を受けた女王ヒッポリュテは、彼らのことを歓待しています。

一説にはヘラクレスが彼女との間に子供をもうけることを条件として、またはヘーラクレースがヒッポリュテの姉妹メラニッペーを捕虜としてこの引き渡しの交換条件として帯を要求したという説、港で出会った時にヒッポリュテは帯を渡した説があります。つまり、思っていたよりもあっさりと、戦うことなく腰帯を手に入れることになっていたのです。

 

しかし、この様子を見ていた女神ヘラは、ヘラクレスの邪魔をするために、アマゾンの女たちに、やって来た異邦人たちは女王をギリシアへとさらってしまおうとしているという偽りの密告をし、女王を奪われたと思い込んだ怒り狂うアマゾンの女戦士たちは、武装して馬にまたがると、そのままヘラクレスたちが停泊していた船のもとへと殺到していくことになります。

油断していたところをアマゾンたちに急襲されたヘラクレスたちは、これをアマゾンたちによる卑怯な謀り事であると考えて応戦したため、戦いの最中、ヘラクレスはアマゾンの女王であったヒッポリュテを殺して彼女から腰帯を奪うと、アマゾンたちの追撃をかわしながらそのまま出港することになります。

●ヒッポリュテが持っていた斧は、ヘラクレスが奴隷として仕えたオムパレーに贈られ、リューディアの勲章となった。

 

こうして女神ヘラの計略によって生じることになった行き違いからアマゾンの女王の腰帯を当初の計画通りに力づくで奪い取ることになってしまったヘラクレスは、ヒッポリュテの本当の思いは彼に伝わることのないまま、（途中でトロイアへと寄港したのちに）エウリュステウス王の待つミケーネの地へと帰っていくことになるのです。