キロン(カイロン)と太陽のアスペクト

傷ついたヒーラー

私たちの出生チャートにおけるカイロンの配置は私たちが学ばなければならない、いくつかの教訓がある領域を指し示しています。

 

これらの領域は、出生チャートのサインとハウスによって支配されています。

 

違和感を感じている部分に気づくことはとても重要です。

 

 

最初、個人はその傷に関して言いようのない恥ずかしさ(羞恥心)を経験し、厄介な方法でそれを処理しようとして、その過程で自分自身を挫折させます。しかし、カイロンが戻ってくる頃(50歳前後/キロンリターン)になると、ほとんどの人はこの恥ずかしさの必然性を諦めはじめ、最終的にはこの傷を治そうとすることの無意味さに気付きます。この年齢になると、傷に対する微妙な心理的変化が起こります。

 

カイロンの傷にまつわる体験で、理想や道徳だけでなく、言葉にはできない感情のレベル(=エネルギー段階やエーテル体・アストラル体など)で引き起こされる能力を目覚めさせる可能性があるかもしれません。

 

それは、人間の完璧さが不可能であること、そして、どんなに栄光に満ち、有名で、成功し、裕福で、精神的に高められ、何百万人にも愛され、「幸せ」であったとしても、自分や他人の中に脆さや無益さが必然的に存在することを、直感的なレベルで即座に認識することを指しています。

 

カイロンはヒドラの毒矢がたまたま刺さり、自分で治療しようと苦しみ続け、最後には何よりも大事にしていたもの(神族であるという存在証明の”不死”)を手放すことで、心身は解放されました。最高峰の医療知識を持ったカイロンですら自分の傷を癒せませんでした。

癒せない傷もこの世界にはある、ということ。それを受け入れることが、癒しでもある、ということ。

 

傷が示すテーマについて驚異的なレベルの感受性(受け入れる器)を身につけることなのです。

 

 

カイロンの配置が示すように、私たちの才能は傷の中に隠されています。しかし、私たちの本当の目的や人生の道は、あなたのチャートの月のノード(ドラゴンヘッド)によって示されます。カイロンは土星と天王星の間にある小惑星です。その軌道は非常に珍しく、物質世界と精神世界の架け橋を表しています。

 

以下は、出生時のカイロンと太陽のアスペクトの解釈です。

カイロンと太陽のアスペクトは、自我・アイデンティティ への深い傷を表しています。この傷は多くの場合、男性性を通してもたらされます。

 

男性性(実際の父親やパートナー)が傷ついている場合もあれば、相手を傷つけてしまう人(反面教師)のようになっている場合もあります。

 

カイロンが太陽にアスペクトしている場合、自分自身であることの難しさがあります。そして、それはその人の人生に反映されます。

 

何よりもカイロンは、原始的な傷と、完全になって自己を癒そうとする衝動を表しています。 このアスペクトがあなたの人生のどの部分で起こるかを見るために、ハウスの中のカイロンとハウスの中の太陽の解釈も参照してください。


カイロンと太陽のコンジャンクション(0度)

 

シェイクスピアが「マクベス」の中で、

 

”人生はただ影法師の歩みだ。

哀れな役者が短い持ち時間を舞台の上で派手に動いて声張り上げて、あとは誰ひとり知る者もない。

それは白痴が語るただ一場の物語だ、

あふれ返る雄叫びと狂乱、

だが何の意味もありはせん。

 

第五幕第五場「ダンシネイン マクベスの居城」/訳:木下順二・マクベスの科白より ”

 

 

この言葉は、太陽とカイロンのコンジャンクションが示すテーマを見事に表現しています。それは「哀しみ」に関しています。

それは、舞台に立って、見てもらいたいという太陽的な願望や、大切にしてもらいたいという憧れを表していますが、実際には、舞台の上で闊歩したり悩んだりしている大袈裟な役者に過ぎず、世界(つまり日常とは別)の中心で、演技・パフォーマンスを行なっているだけです。

 

そして、その(期待に沿って作り上げられた)役者としてのあなたを、観客は、不可能にもかかわらず、あなたが輝くことを期待しているのだ、と重圧に感じているのです。

 

ここでいう観客とは、あなたの周りにいる人たちのことです。太陽が表す象意の父親、またはあなたの人生において思いつく男性(芸能人も含め、パートナーや上司)などかもしれません。

 

そのため、あなたには大きな緊張感があります。また、他人が自分に何を期待しているのか、非常に敏感になっています

 

進化占星術では、太陽は創造的な自己実現の象徴と認識されています(ジェフリー・ウルフ・グリーン氏の教えによる)。したがって、カイロンと太陽の合は、自分の創造的な可能性や輝き、あるいは世界に自分の足跡を残す能力について、並々ならぬ感受性を持っていると言い換えることができます。

 

あなたはとても繊細で傷つきやすいのです。

何よりも、あなたは応援したり、励ましたりすることを仕事にしているかもしれません。才能の発掘者、教師、健全な自我の確立を支援するカウンセラー、他人が輝けるようにするコーチなどになることができます。

あなたが他人の中にある自分の痛みを認識したとき、あなたは他人を応援し、非常に個性的で輝かしい運命へと導く人になる傾向があります。

 

このアスペクトは、自我の中心にある聖なる傷を象徴しています。 その傷はあなたを弱くします。しかし、あなたは稀有な感受性を持って人生を受け入れることができます。それは、他人の自己意識を大切に扱わなければならない職業に必要な感受性です。

 

・ポジティブな特徴:感性、想像力、直観力、精神性、調和感覚など、何よりも優れたものを持っています。また、利己的で従順な性格である可能性もあります。

 

・ネガティブな特徴 :傷つきやすく、過敏なところがあります。 また、創造的な人にとても嫉妬するかもしれません。カイロンと太陽のアスペクトは、扱いやすいものではありません。

 

エル・グレコ 「十字架のキリスト」 (1600-1610)
エル・グレコ 「十字架のキリスト」 (1600-1610)

カイロンと太陽のスクエア(90度)

 

このアスペクトがもたらす典型的な特徴:あなたの自己意識が、感情によって挑戦された可能性があります。

 

カイロンに羞恥心を刺激されることによって、底知れぬ寂しさを感じることになるかもしれません。

 

これは海王星や土星に関連する孤独感とは異なります。

海王星の孤独には、精神的な喜びのヒントがあります。海王星の孤独は、精神的な快楽をほのめかすもので、精神世界のより高い快楽を得るために、物質世界から身を切る修道士の孤独に似ています。

 

土星の孤独は、本人が選んだわけではなく、外界の状況がそれを必要としている場合が多い。それは、犯罪の罰として隔離された期間を過ごさなければならない刑務所の囚人の孤独に似ています。

 

ネイタルのカイロンと太陽アスペクトの孤独は、出生チャートの特定の構成と関係しています。多くの占星術師は、それが十字架上のイエスの孤独に似ていると言います。

言い換えれば、彼は自分を十字架にかけた人たちを「憐れむ」必要があることを知っていました。

イエスは、一般群衆から切り離されたように感じていました(何故なら、自分は彼らの一員になれないからです。)

彼にとっては、十字架にかけられることに海王星的な喜びはありませんでした。

一見、磔にされることを選んだように見えても、彼には他の選択肢がありませんでした。

 

彼は自分がしなければならないことをしなければならず、それをすることで彼は孤独になりました。十字架にかけられた太陽の息子という比喩は、太陽とカイロンのスクエアが表す心理的側面を象徴するイメージとしてふさわしいでしょう。

 

 

 

大人になると、このような頭と心のギャップを簡単に処理できるようになるかもしれません。

苦手と感じていた父や居心地の悪かった故郷、自分のルーツとの関係をより深く理解できるようになるかもしれません。その理解を生かして、同じような孤独感を抱えている人を助けることができるかもしれません。また、この理解を利用して、世界で良い仕事をすることもできますが、そのような仕事の背後にある積極的なエージェントとして(自分が有名なヒーラーやメンター・占星術師として名を上げ)世間に認識されなければならないというエゴ中心的な必要性はありません。

 

あなたは、自分の個性を批判されたり、拒絶されたり、排除されたりすることがよくあります。そのため、自分の最もユニークな部分を隠したり、抑圧したりすることが多いかもしれません。あなたは期待されることを嫌う。 他人が自分をコントロールしようとすると、敵対的になったり、深く悩んだりします。

 

・ポジティブな特徴: これらのカイロンと太陽のアスペクトを持つあなたは、非常に繊細です。また、音楽、文章、詩などに非常に才能がある場合が多いです。

ネガティブな特徴:奇妙な出来事を経験したり、謎やスキャンダルに巻き込まれたりする可能性があります。あなたは自由への苦しい憧れを持っていますが、それを恐れています。

 

 

カイロンと太陽のオポジション(180度)

 

このアスペクトがもたらす典型的な特徴 :あなたは人間の不完全さを認識しており、可哀想な他人を助けたいと思っています。無意識のうちに傷ついた相手に注目してしまう傾向があります。

 

 

出生図にこの配置がある人の多くが、生徒や顧客との相互作用に影響されることなく、治療者や指導者といった特別視される立場になれるような職業になりがちです。

何故なら、他者からの決めつけによってのみ自己意識が形成された可能性があります。カリスマ的な存在に仕立て上げられ、自分の弱さや欠点は認識しないようにするかもしれません。

この配置の人は、相手を傷ついた者として(つまり同情やケアに値する者として)注目する無意識の傾向があり、そのために自分自身の傷に対処したり認めたりすることから都合よく目をそらすことがあります。

 

自分の最もユニークな部分を隠したり、抑圧したりしてしまいます。他人は自分よりも劣っていると考えているために支配されると、敵意を抱くことがあります。その威圧によって依存しあった関係性を作り出しているという事実を認識できなくしている場合もあります。

 

 

自由になることを切望していますが、その反動を恐れています。

 

あなたのエネルギーのかなりの部分は、恥ずかしがらずに自分を表現する方法を学ぶことに費やされます。

どのような形であれ、社会的な汚名やアイデンティティの阻害は、自己の発見と実現のための第一の触媒となります。カイロンと太陽のアスペクトは、あなたに自分自身を受け入れることを強いるでしょう。

 

あなたはカイロンの脆弱性を意識しないままでいることが多いです。相手のチャートの惑星やポイントに自分のカイロンが触れるまでは、自分のカイロンの脆弱性を意識しないでいます。ですから、あなたは他人と親密で感傷的な関係性を結ぶことで、自分の稀有な感受性を受け入れる流れができるでしょう。カイロンには対話的な性質があり、二人が人間の不器用さや不完全さのすべてを直感的に「見て」、お互いを認め合うのを助けます。

 

出生チャートにおいてのカイロンと太陽のアスペクトでは、あなたの人生における父親や男性の人物との関係は難しいものだったかもしれません。父親は自分の弱さを否定したり、それを子供に投影したりして、子供に同情と配慮をもって接しながらも、その傷を受け入れられずにいたのかもしれません。例えば、障害を持って生まれた子供が、父親から障害がないかのように扱われている場合、良い親子の信頼関係が築けていたならば、子供が障害を乗り越えて自立に役立つかもしれませんが、父親が拒絶や否定を証明しているだけならば、最終的には子供の精神にダメージを与える可能性があります。

 

・ポジティブな特徴:あなたは非常に知的で、繊細で思いやりのある人が多いです。

 

・ネガティブな特徴: このアスペクトは、あなたを過度に共感させ、自分を犠牲にすることを厭わない。そのため、人に利用されたり、騙されたりすることがあります。問題を解決するために薬物やアルコールを使用する傾向があります。

 

カイロンと太陽のクインカンクス(150度)

 

この配置は、自分の傷や感受性によって自己意識が圧倒されたり、低下したりしていることを示しているかもしれません。

 

また、父親や本人に限界や障害があるために、父親や(イメージの中の父親像)に見捨てられたと感じている場合もあります。

 

あるいは、父親や身近な男性が、恥ずかしいからと自分をさらけ出すことができないと感じている場合もあります。父親は、気まずい憶測を呼びかねない自分の側面を明らかにすることに非常に抵抗があったため、単に物事を隠していたのかもしれません(例えば、同性愛者との出会い、子供の頃のどもり、売春婦の母親がいたことなどを明らかにしなかったのかもしれません)。

 

 

カイロンと太陽のアスペクトを持つあなたは、淡々と目の前のことを「諦めの境地」の中で「生産性のないことを選択しない」人かもしれません。

 

それは、単に休むことができないということもあります。

 

他人から無駄な指摘を受けたくないという強迫観念が身なりを正し、礼節をわきまえた、大変自己評価の厳しい性格になっていたりします。

これは自己評価が低いことを突き詰めれば、その人にしかできない唯一の特技にもなっています。

 

他人目を気にしすぎるが故に他人が目に入っていない、鏡で常に自分をチェックする人もいるかもしれません。これはナルシストではなく、変だと思われたくないというマイナス要素を含めたニュアンスになります。

 

その立ち振る舞いや言動がエースのように捉えられ社会的な地位は比較的高めになりそうですが、先生と呼ばれながらも永遠の生徒でもあるような気持ちがあるかもしれません。

 

やりたいとかやりたくないとかそういう考えも持ち合わせず、淡々と目の前に現れる事象(仕事や人間関係)に取り組んでいくことで、低い自己意識のまま出世していきます。

 

場合によっては、自分の人格のすべての側面を外に示すことはできない、賞賛されたり尊敬されたりするためには自分の人格のある側面を抑制する必要があると直感することがあります。

 

この太陽とキロンが150度の出生チャートを持つ人として、女優の吉岡里帆さんがいます。

 

 

 

カイロンと太陽のセミセクスタイル(30度)

 

 

この配置は、自分の傷や弱さから自己意識が偏ってしまっている可能性を示しています。あるいは、自分の哀愁に対する反応として、自己意識が形成されている可能性もあります。

 

 

この構成の出生図では、父親や人生の中で突出した男性の人物は、自分の感覚を傷から切り離すことで、ある種の生来の弱さにもかかわらず、人生を生きてきたかもしれません。しかし、セミセクスタイルのアスペクトは、意識の周辺に存在する微妙な力を暗示しているので、傷は心理的に自我構造に統合されるのではなく、身体化され、行動に移され、実践的に生きてきた可能性があります。

 

 

本人は自分のことをソフトでデリケートだと思っているかもしれませんし、他の人からもそう思われているかもしれませんが、実際には性格の中にタフな一面があり、苦境や痛ましいシナリオのすべてのタイプに対応できる能力を持っています。この意味で、この人は自分自身を壊れやすいと認識しているかもしれませんが、通常は他人が対処するのが困難な状況に対して、全く敏感さや恥ずかしさを感じていないことを示しています。

 

この構成に対処するための鍵は、個人が両方の性質を持っていることを理解し、必ずしもどちらか一方に合わせるのではなく、両方の性質を同時に発揮することが可能であることを理解することです。

 

 

 

カイロンと太陽のトライン(120度)

 

この構成の出生チャートでは、通常、自分の弱さと意識できているアイデンティティとの間には、円滑な心理的つながりが存在します。言い換えれば、欠点あっての自分として認識できているので、傷が存在することを受け入れていて、内なる安心感が際立っています。

 

 

太陽は創造への衝動であり、カイロンは不完全でありながら美しい人生の本質についてのユニークな視点を提供します。

 

出生チャートのカイロンと太陽のアスペクトは、芸術と文学に最も傾倒しています。

 

多くの芸術家、作家、ファッションデザイナー、ミュージシャンがこの構成を出生チャートに持っています。

 

ダンテの三部作「神曲」をはじめ、多くの文学作品の挿絵を手がけたフランスの画家、ギュスターヴ・ドレがその代表的な例でしょう。特に「プルガトリオ」や「インフェルノ」に登場するカイロニック・ハイブリッドやモンスターを幻想的に描いた作品は注目に値します。

 

太陽とカイロンの間の調和的なエネルギーの流れは、場合によっては、傷ついた状態がアイデンティティーの基本形になるほどになるかもしれません。この場合、出生チャートにこの配置がある人は、傷を通して他人とつながるのは簡単だが、傷とは関係のない出会いや価値観を見逃してしまうかもしれません。

 

アイデンティティは、固定観念を破ったり、目立ったり、何かに反抗したりすることに依存しています。

 

自由を楽しむことが行き過ぎると、深刻な自虐的な問題になることがあります。

 

あなたは明確な自己認識を持っています。堂々とした自己表現によって、あなたは解放されています。社会的な不和を楽しむこともできます。 また、あなたは規則や基準に飽きやすいタイプです。

 

 

カイロンと太陽が出生チャートでアスペクトしている人は、自分自身が本当に望んでいたことなので、他の人に暖かさと喜びをもたらすことができます。

 

・ポジティブな特徴:カイロンと太陽のアスペクトを持つあなたは、非常に繊細でクリエイティブな人です。あなたは流行を先取りでき、世界観において時代の先端を行っています。あなたはしばしば他人の自信を高めるのが得意です。

 

・ネガティブな特徴:敏感なので、人や状況からのネガティブなエネルギーに弱いです。そのため、競争が少なく、より協力的で思いやりのある環境で、あなたは最高の働きをするでしょう。

 

 

 

カイロンと太陽のセクスタイル(60度)

 

 

このセクスタイルがもたらす典型的な特徴:自己意識を育む機会に恵まれます。環境の影響を受けて、カイロンのテーマに触れやすくなったり、自分の弱さが研究対象になったりすることがあります。

 

 

本人の父親や著名な男性は、傷の性質に非常に興味を持っていたかもしれませんし、理学療法、エネルギーヒーリング、心理療法などのヒーリングアートを生涯にわたって学んだり実践したりしていたかもしれません。

 

いずれの場合も、傷や癒し、医療、メンターシップの概念に対して、知的な開放性を示しています。

自我の構造の一部は、実際には、このようなテーマを研究するための開放性と衝動に基づいて形成されているかもしれません。同じ境遇であったり似たような経験者の仲間を見つけたいという衝動があるかもしれません。

 

あるいは、兄弟や親しい友人など、身近な環境に(障害や傷を負っていたり、何らかの形で弱者となっていたり、癒し系の職業に就いていたり)を持つ人がいて、普段の生活の中で癒しの実践を認識して育った場合もあります。それゆえに、傷の存在が大きく形成されているかもしれません。ここでのリスクは、同じ傷を持つ(仲間と認識している)人たち以外に関係性が作りづらくなって、相手との関係性のみが人生を占めてしまうことです。

 

したがって、出生チャートにこの配置がある人は、この可能性について警戒し、周囲の人とのカイロンの出会いを健康的な好奇心と観察力で分析することが重要です。